尿を調べることは、血液検査などの検査に加え、たくさんの情報を得ることができるので、健診時の同時実施をおすすめしております。
膀胱炎、尿路結石などの泌尿器疾患はもちろん、腎臓病や糖尿病などを早期発見できることもあるんです。特に腎臓病は血液検査よりも尿検査の方に先に異常が出てくるのでとても重要です。
早期に異常に気付ければ腎臓の保護に努めることができます。
尿検査はどんな時に行うの?
・健康診断
・尿の量、色、においなどに変化があるとき
・トイレにいる時間が長くなったとき
・トイレの周りをウロウロすることが増えたとき
・おしっこやトイレの回数が多いとき
・普段しないようなところで尿をするとき
・元気や食欲が落ちたとき
・糖尿病、慢性腎臓病などの評価を行うとき
どんな検査なの?
〜 尿試験紙 〜
◎ pH
おしっこのpHは食事内容や体の酸-塩基バランスによっても変動しますが、だいたい犬の尿のpHは弱酸性〜中性です。
pHが酸性またはアルカリ性に傾いている場合、尿路結石ができることがあります。
◎ 尿タンパク質
正常な状態ではおしっこにタンパクが出現することはありません。尿中にタンパクが出現したときは腎機能に問題がある場合や、尿路や生殖器に問題がある場合などが考えられます。特にヨークシャテリアや腎臓病のワンちゃん・ネコちゃんは要注意です。
腎前性:『血液中のタンパク濃度が上昇していることが原因』
腎性:『腎臓自体の機能障害が原因』
腎後性:『腎臓の中の腎盂という部分以降の尿路(尿管、膀胱、尿道)や生殖器が原因』
◎ ブドウ糖(尿糖)
正常な状態ではおしっこにブドウ糖が出現することはありません。しかし腎臓でブドウ糖の再吸収が追いつかなくなると、ブドウ糖がおしっこに排出されるようになります。この場合、糖尿病や腎機能の低下が疑われます。
◎ 潜血(尿中に出現した血液)
潜血には血尿とヘモグロビン尿の2種類があります。血尿の場合は尿路系のどこかからの出血が考えられます。ヘモグロビン尿の場合、溶血性貧血などが考えられます。
血尿:『尿路のどこかで出血している』
ヘモグロビン尿:『血管内での赤血球の破壊』→様々な病気で起こります
ミオグロビン尿:『筋肉の損傷』→様々な病気で起こります
◎ ケトン
ケトーシス(エネルギーを作るのに炭水化物の代わりに脂肪が利用されている状態)飢餓、糖尿病性ケトアシドーシスなどでみられることがあります。
◎ ビリルビン
肝臓・胆道系疾患や溶血性疾患が疑われます。
溶血→いろいろな原因で赤血球は壊されます。
胆汁うっ滞(ただし正常な場合でも濃縮尿サンプルは少量含むことがあります)
〜 尿比重 〜
水の比重を1とした時のおしっこの重さをあらわします。おしっこの濃さと捉えていただいていいでしょう。犬の正常値はだいたい1.030〜1.045くらいです。
尿比重値が正常より下回る場合は尿の濃縮能力を低下させる腎臓病や、尿崩症や副腎皮質機能亢進症といった内分泌疾患(ホルモンの病気)などが考えられます。
正常値を上回る場合は脱水などが考えられ、尿石症のリスクが上がります。
〜 沈査 〜
肉眼で観察することのできない尿中の結晶または細胞成分を分離して集め、顕微鏡で観察します。健康な犬では沈渣はほとんど認められません。
◎ 細胞成分:
尿路系または生殖器に炎症がある場合は、炎症細胞である白血球が出現します。
赤血球がみられる場合は尿路系の出血が疑われ、膀胱炎や前立腺疾患、尿路結石症、腫瘍、糸球体腎炎などが考えられます。
沈渣中に上皮細胞が見られることがありますが、その上皮細胞に悪性所見が認められる場合は腫瘍などの可能性が考えられます。
◎ 結晶:
結石を形成する原因となります。また、尿路の粘膜を物理的に刺激し血尿や膀胱炎を引き起こす原因にもなるので、たくさん出ている場合は注意が必要です。
犬はストルバイト結晶やシュウ酸カルシウム結晶が出来ることが多いです。ストルバイト結晶はおしっこがアルカリ性に傾いていると、シュウ酸カルシウム結晶はおしっこが酸性に傾いていると析出しやすいと言われています。
お持ちいただく「おしっこ」についてのお願い
「1日経ったおしっこ」、「量が少ないおしっこ」、「シーツや砂で固まっているおしっこ」、などは検査ができません。どうしても採れない場合はご相談ください。