犬や猫から新型コロナウイルスが検出された報道について(更新)

 

新型コロナウイルスについて

2020年3月29日

ご存知の方もいらっしゃると思いますがベルギー政府の発表では猫が新型コロナウイルスに感染した事例が報告されたとのことです。

ベルギー政府の発表では

・この猫ちゃんの糞便中からコロナウイルスが検出されたこと
・下痢や嘔吐の消化器症状と呼吸困難が出たが現在は快方に向かっていること

とのことです。ただこれ以上の情報がなく、わかり次第報告させていただきます。

 

新型コロナウイルス(COVID-19)が世界的に流行となり、今後もウイルスに感染し、発症する人が継続的にみられると予想されています。

先日、新型コロナウイルスに感染し、発症した飼い主の犬からウイルスPCR検査で弱陽性が出たという報道がありました。飼い犬2匹のうちの1匹に弱陽性反応が出ましたが、『犬には呼吸器症状を含めた病状はない』とのことでした。

今回、世界小動物獣医学会(WASVA)が現時点における専門委員会としての見解を示しています。

<現在判明していること>

・現時点では、新型コロナウイルスCOVID-19は、『ヒトからヒトへ限って感染するウイルス』であり、『ヒトから犬、猫への感染があり、ペットが発症する』という事実は否定されています。

・ヒトからペットに「付着」したウイルスが、『他のペットやヒトに感染するという事実』も現在のところ否定されています。

・香港の感染報告で犬からウイルスが検出された事実から、できる限りの予防対策をとるようにしましょう。

・新型コロナウイルスに感染したヒトは『自身で犬、猫の世話をしない』で

他の人に世話をお願いしてください。

・自分が新型コロナウイルスに感染している場合は、犬や猫をなでる、抱く、

キスする、食器などを共有する、など接触するようなことはしないでください。

・自分で世話をしなくてはならない場合は、マスクを着用し、その前後に手洗いをし

た上で、できるだけ接触する時間を少なくしてください。

・他の人が世話をする時は、前後の手洗いと消毒、マスク、ゴーグル、手袋の着用と

いった、感染予防対策を十分に行い接触は最低限にしてください。

 

最後に繰り返しになりますが、現時点では犬、猫への感染は認められていません。何よりも、まずはご自身の感染防御を徹底していただくことが重要です。

 

当院では新型コロナウイルスの対策はできる限りのことはしておりますが、

待合室での待ち時間を減らしたいと考えております。

そこで、飼い主様にお願いがあります。

来院される際は可能な限り平日にいらして頂き、待ち時間を減らすご協力をお願いします。

 

東京獣医師会からの報告

 

< 以前の報告 >

香港の犬からの新型コロナウイルス検出に関する追加情報【3月5日更新】

これまでの情報ならびに獣医学の常識から,犬には人間のコロナウイルスは感染しないだろうと考えて情報を発信して参りましたが,どうやらわれわれ獣医界の知らないことが起こったようです.

2月下旬に香港の60歳の女性で新型コロナウイルス感染が確認され,その人が飼育する老齢のポメラニアンの鼻と口の材料に新型コロナウイルス感染の弱い陽性反応がみられました.これがウイルスの付着によるものか,感染なのかを調べるため,その後のウイルスの存在を追跡したところ,複数回の弱陽性反応が出たことから,香港漁農自然護理署(AFCD)は犬が「低レベルの感染」をしていると結論しました.同時にこの所見は大学や国際獣疫事務局(OIE)の専門家たちによっても確認され,「人間から動物への感染例の可能性が高い」とされました.

この犬は新型コロナウイルス感染の症状を全く見せていないといわれていますが,香港政府が先月28日に出した新型コロナウイルスに感染したペットを14日間隔離する措置を受けています.香港では,別の感染患者の犬も1頭隔離されており,現在は陰性となりましたが,隔離は続けられているそうです.香港政府は「現時点でペットがウイルスを媒介するというデータはない」と強調しています.そして,動物が感染源になるといった過剰な心配を抱かないように呼びかけています.

以上が朝日新聞デジタルおよびAFPが報じたニュースの抜粋です.犬が感染する可能性は極めて低いといったわれわれの考えは間違っていたことがわかりましたので,ここに正しい情報をお知らせしました.それではわが国の犬においてどのような対応ができるのかを以下にまとめます.

1. 犬における感染
これまでの香港の2頭だけの経験では,感染であっても低レベルであり,犬には症状は出ないようです.しかし,生きたウイルスが少量ながら一定期間そこに存在するということで,注意は必要です.一方,わが国では動物に対して人間のコロナウイルスのPCR検査を行う体制は全く整っていませんので,検査を行うかどうかについては保健所の判断と思われます.動物病院に来院されても国立感染症研究所から出されている感染管理ガイドラインに沿った対応はできません.

2. 人間が感染して家庭に犬がいる場合
犬は家の中で隔離してください.幸いに犬が健康を害することはないようなので,隔離しておけば自然に感染はなくなるものと思われます.症状がなければ動物病院でできることもありません.また,人間のコロナウイルス感染者を受け入れることができるような病院に相当する動物病院の体制は整っていません.感染した人間が軽症で家にいるならご自分で犬の世話をしてください.感染した人間が入院する際には,犬をどうするかについては,医師ならびに保健所の指示を仰いでください.

3. ふつうの家庭犬は
外出を避ける,外に出るのも家の周りだけにする,人混みには連れて行かない,他の犬との接触を避けるためドッグランも利用しないことで,自宅にいるのが最も安全と思われます.犬にはコロナウイルスが入ったワクチンもありますが,これは犬の消化器コロナウイルスのワクチンで,人間のコロナウイルスに対しては効きません.

4. 猫はどうする
猫にも感染のリスクはあると考えて,外に出さず,家の中においてください.猫のコロナウイルスには,多くの猫が持っている病原性のほぼない猫腸コロナウイルスと,それが突然変異してごく少数の猫に病原性を示す猫伝染性腹膜炎ウイルスがありますが,これらは人間のコロナウイルスとは異なり,猫ではワクチンはありません.猫に人間のコロナウイルスが感染するかどうかについては,SARSコロナウイルス大量を実験的に気管内に接種して感染が起こることが示されていますが,これはあくまでも自然界では起こりえないような実験的な条件であり,その場合も重大な病気は起こらず,すぐに感染から回復するとされています.したがって犬同様に対応してください.

5. 最後に
今回の事例では,犬は善意の第三者であり,たまたまウイルスをもらってしまったと考えられ,どうして犬に感染が起こったのかについては,老齢の犬であったからなのか,それとも犬はすべてそうなのかはまだ例数が少ないためわかりません.しかし,中国のように多くの感染患者がいる場所でも,犬から病気をもらったというような状況は報告されていません.犬は大切な家族の一員です.決して犬を悪者にしたり,飼育を放棄したりしないよう,そして過剰に恐れることなく,ふつうに対応してください.

文責
日本臨床獣医学フォーラム会長
石田卓夫(獣医師,農学博士,日本獣医病理学専門家協会会員)

 

 

日本獣医臨床フォーラムからの報告

JBVPからのお知らせ

香港の犬からの新型コロナウイルス微量検出報道について

香港の新型コロナウイルス感染患者の飼い犬の鼻および口から微量の新型コロナウイルスが検出されたという報道があります【2月28日 AFP】.この犬に本当に感染があったのか,それとも単なる汚染であったのか,あるいは検査の誤りであったのかについては,今後の検証を待つ必要がありますが,これまでのコロナウイルス研究の常識によれば,人間のコロナウイルスが犬に感染する状況は極めて考えにくいものです.人間のコロナウイルスはベータコロナウイルス群であり,それに対して犬固有のコロナウイルスはアルファコロナウイルス群で大きく違うものです.

現在使われている検査法は,PCR法というわずかな遺伝子でも増幅して検出する方法であるため,微量のウイルス遺伝子が検出されてしまうこともあるのです.しかしその増幅のパターンから,真の感染なのか,あるいは単にウイルスがそこにいただけかは,ほぼわかります.したがって今回の場合,ウイルスが微量に検出されたと言うことで,そもそもウイルスが感染しているとは言えないと思われます.また検出された微量のウイルスが生きているウイルスかどうかも確かではありません.すなわち,新型コロナウイルスに感染した人間の回りでは,机,手すり,床,ありとあらゆるところで短時間ウイルスが検出されることはありうるのです.

したがって,今回の事象は人間のウイルスが犬に感染したとは考えにくいのです.しかし,手すりなどと同様に,ウイルスが一定時間生きていて,人間に対する感染源になることは否定できません.これは飼い犬であろうと,ぬいぐるみの犬であろうと同じであろうと思われます.コロナウイルスの問題に限らず,日頃から犬に顔を舐めさせたり,犬とキスをすることなどはやめましょう.

万が一ご自分がどこかで感染して入院することになったら,誰かに飼い犬を見てもらうことになるでしょうが,犬が病気になることは心配せずに,まずぬるま湯とシャンプーで犬を洗ってもらい,そのうえで預かってもらえば安心です.

文責
JBVP会長 石田卓夫(獣医師,農学博士,獣医病理学専門家協会会員)