新型コロナウイルスの第3波が広がり、ワクチン接種による集団免疫の重要性が報道されています。
ところで、動物のワクチンでも、この集団免疫がとても重要だってご存知ですか?
例えば、5人だけワクチンを打ったAクラスと、30人がワクチンを打ったBクラスがあるとします。
両方のクラスに1人ずつウイルスに感染した生徒がいるとき、どちらのクラスの方が、ウイルスが広がるのが早いでしょうか?
答えは、ワクチンの接種人数が少ないAクラスです。
この集団免疫は、1年に1回の接種が推奨されるペットのワクチン接種でも重要です。
日本のペットのワクチン接種率はかなり低い!?
2015年度に行われた調査では、国内の混合ワクチン摂取率は 犬25% 猫10%という結果があります。
混合ワクチンは、犬猫で致死率の高い感染症に対する免疫を高め、重症化リスクを下げるためのワクチンです(狂犬病ワクチンを除く)。
国内全体で見たこの数値はとても低く、集団免疫が十分に達成された状態とは言えません。
つまり、もし感染症が流行したら、外国より危険性が高いということです。
これは、海外で言われている3年に1回のワクチン接種を国内で導入するか迷うところです。
なんで日本はワクチン接種率が低いの??
接種しなかった方の主な理由
- 自宅の中で管理しているため、感染症にかからないと思った
- 病院やペットショップで薦められなかった
- ワクチンで体調を崩すかもと思った
などなど理由は様々あるようです。
今回のコラムを通して『免疫を持たない集団では感染症リスクがさらに上がる』という事実を知って頂けたら幸いです。また今後も、私たち動物病院からの継続的なお知らせの必要性も感じました。
この状況から見ても、飼い主さんにワクチンのメリットとデメリットを知ってもらい、必要な子にはちゃんとワクチンを接種してもらうことが大切です。
ワクチン接種意外にワクチン抗体検査もございます。ワクチン接種に疑問や不安がある方はお勧めこちらをお勧めしています。
詳しくはこちら→『ワクチン抗体検査』
混合ワクチンに関するよくある質問コーナー
接種したら絶対に感染症になりませんか?
A. 100%ではありません。しかし、予防効果や、症状の重篤化を抑えることができます。
子犬の時などは、複数回続けて接種して初めて高い効果が得られるワクチンもあるので、当院の獣医師が適切な接種スケジュールを提案します。
1回の接種では感染症に対する免疫力を十分に高められないのですが、2〜3回接種することで十分な免疫力を獲得できるからです。
ヒトのインフルエンザ予防接種も、1シーズンに2回続けて接種しますよね。
これも同じで、2回続けて接種することでインフルエンザ菌に対する免疫力を高めているのです。
また複数回つづけて接種することで、病気にかかる確率を下げるだけでなく、かかってしまった時の症状も抑える効果が期待できます。
あらかじめ免疫力をつけておくことは、これだけメリットがあると覚えておきましょう!
子犬で初めてワクチンを打った後、いつから散歩に連れていけますか?
A. 子犬の時期の最終接種、つまり、16週齢以降の接種のあと、2週間ほどしたら可能です。
外に出ない子も接種は必要ですか?
A. 普段外に出ない子も、接種することが薦められます。
近年、自然災害により避難警報が発令されるケースが増加傾向にあります。避難所や集会場を利用する場合など周囲の動物と同様に保護してもらうために、ワクチン接種が必要になります。
以前ワクチン接種で具合が悪くなりました。また打たなければいけませんか?
A. アナフィラキシーの様な症状を起こしたことがあるなら、接種はできません。
アナフィラキシーとは、体内に入ったアレルゲンにより複数の臓器や全身にアレルギー症状が表れ、命に危険が生じ得る過敏な反応が出ることをいいます。
軽度のもの:顔の腫れ、じんましん、発赤、嘔吐、下痢
重度のもの:低血圧、呼吸困難、場合によって死に至るの可能性
軽度のアナフィラキシーだと、上の写真のように目まわりなどが腫れて痒くなることがあります。
ワクチン接種の後にこのような異変を見つけた時は、すぐ動物病院に連絡してください。
以前打ったワクチンによる免疫力(抗体価)が維持されているかどうか、抗体価検査で調べることができます。免疫力が残っていなければ、外出させない、ペットが集まる公園に行かないなどして、感染リスクを落とす心がけが必要になります。
ワクチンの副作用で死ぬことはありますか?
A. 約0.01%以下の低確率ですが、副作用で死亡することもあります。
この対策として接種後に、体調の異常を認めた場合はすぐにご連絡ください。