- 目が充血している
- 目の表面が白くなってきた
- 目の表面に傷がついている
日頃からペットを良く観察していると、こんな症状に気づくことがあります。
特に目の異常は様々な病気に進行するため、絶対に放置してはいけません。
今回は、目の表面の疾患の中で最も来院件数の多い『角膜潰瘍』について紹介します。
外傷や感染が原因で角膜の組織が欠けてしまう病変が角膜潰瘍です。 角膜は透明で、表面から上皮、実質、デスメ膜、内皮という層から成る薄い組織です。角膜の損傷が上皮のみの浅いものを表在性角膜潰瘍、角膜実質に及ぶ深いものを深部性角膜潰瘍といいます。みんなのどうぶつ病気大百科
角膜潰瘍の症状
- 目が充血する
- 目の表面が白く濁る
- 見えづらそうにする
- 黄色い目ヤニがでる
症状が疑われたら必ず動物病院へ!
目の病気全般で言えることですが、
異常が見つかった時は、放置せずなるべく早く動物病院で見てもらいましょう。
目の症状は進行が早く、数日で重症に発展することがあるからです。
今回の角膜潰瘍も、発症から数日で「目に穴があく(角膜穿孔)」「失明」につながる可能性があります。
目に異常を感じた時は、なるべく早く動物病院の受診を検討してください。
角膜潰瘍の原因
角膜の損傷
角膜は外側から順に、上皮・基底膜・実質・デスメ膜・内皮という層状構造になっています。
これらの角膜構造の損傷によって角膜潰瘍が起こります。
角膜の治癒反応の異常
上に記載した角膜の損傷に加えて、角膜上皮・角膜実質の治癒反応に異常があると、
これも角膜潰瘍を起こす原因になります。
角膜上皮は角膜の一番外側を守る丈夫なバリアで、皮膚と同じように、
常に細胞が分裂して入れ替わる(ターンオーバー)ことで小さな傷なども治癒します。
このターンオーバーにかかる時間は約7日間と言われていて、
なんらかの問題でターンオーバーに異常が起こると、角膜が治癒できず角膜潰瘍につながります。
角膜実質は角膜の中層にある分厚い層で、角膜実質にまで損傷が及ぶと治癒がとても難しくなります。
角膜の素となる成分を供給しながら、細菌の感染なども防がなければならないため、動物病院での治療が必要になります。
角膜潰瘍の診断
角膜潰瘍の診断で行われる検査項目を紹介します。
角膜潰瘍の治療法
角膜潰瘍の治療は、点眼薬や外科的な手術がメインにになります。
長い間、自宅でこまめに点眼したり、ペットが目を掻かないように管理したりと、
飼い主様の協力も必要になることが多いので、覚えておきましょう。
点眼のしおり
点眼薬を使用される飼い主様へ、ポイントをまとめたしおりをお渡ししています。
ぜひ、ご自宅で点眼をする際の参考にしてみて下さい。
抗生物質(点眼薬)
病変部に細菌が感染すると、角膜が治癒できずに病変が進行してしまうため、
角膜潰瘍の治療には細菌を倒す「抗生物質」が必須です。
主に抗生物質入りの点眼薬が使われ、1日3回以上の頻度で点眼することも多くあります。
感染した細菌に効果的な抗生物質を調べる検査(細菌検査)を行うことで、治療の効果が得られやすくなります。
抗コラゲナーゼ薬(点眼薬)
抗コラゲナーゼ薬は、コラーゲンの分解を抑制する働きがあります。
角膜実質の大部分はコラーゲンで構成されているのですが、
細菌感染や炎症が起こると、コラーゲンが破壊されて角膜が治癒できません。
そのため、抗コラゲナーゼ薬でコラーゲンの分解を抑えることが必要になります。
抗炎症薬(点眼薬)
角膜潰瘍があると角膜に炎症を起こす他に、目の神経を介して眼球の広範囲に炎症が広まる可能性があります。
そのため、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)という抗炎症薬で、炎症と痛みを緩和します。
ヒアルロン酸ナトリウム(点眼薬)
ドライアイの子など、涙液量が少なく目の表面が乾燥している際に良く使用されます。
乾燥が原因で、目を掻いてしまう子などに使用されることがあります。
一時的な眼瞼縫合(がんけんほうごう)
眼瞼縫合とは、まぶた(眼瞼)を縫い合わせて目を閉じる処置のことです。
まぶたを閉じて角膜潰瘍の病変部を覆うことで、↓の効果が得られます。
- 物理的な刺激から病変部を守る
- 乾燥から病変部を守る
治療期間が終了したら、縫合は解除されます。
エリザベスカラーの使用
角膜潰瘍の目をワンちゃんが自分で擦ることで、病変が悪化することが非常に多いです。
そのため、エリザベスカラーで目を掻いたり擦り付けたりできないようにすることも治療でとても大切です。